DETAIL
マルク・シャガール
《サーカス Pl.4》
リトグラフ
1967年
42.5×32.5cm
《サーカス》より
限定250部
額・黄袋・箱付き
本作品《サーカス Pl.4》は、マルク・シャガール(Marc Chagall, 1887-1985)が1967年に制作したオリジナルリトグラフ集《サーカス》の中の一点です。シャガールは生涯を通じてサーカスに魅了され続け、その世界を「人生の寓話」として作品に描き出しました。本作は、その幻想的で祝祭的なサーカス世界を象徴する重要な一点です。
サーカスへの憧憬と創造
シャガールにとってサーカスは単なる娯楽ではなく、「人間存在の喜びと哀しみ」を投影する舞台でした。彼はサーカス芸人や曲芸師の姿に、運命に翻弄されながらも希望を失わない人間の強さを見出しています。本作でも、中央に描かれた赤いドレスの女性曲芸師が白馬の背で優雅に踊り、その周囲には空中ブランコの芸人や観客たちが幻想的な空間を形づくります。そこには現実と夢が交錯する、シャガール独特の魔法のような世界観が広がっています。
色彩が生む幻想的な舞台
この作品を象徴するのは、深いターコイズブルーを基調とした色彩と、中央の赤いドレスの鮮烈な対比です。青は夜のサーカス小屋を包み込む神秘的な空気を、赤は歓喜と生命力を象徴しています。
さらに、背景に描かれた観客や月、花束などは、現実の形を保ちながらも幻想の中で柔らかく溶け合い、サーカスの高揚感と夢幻性を一層引き立てています。
《サーカス》シリーズの中での位置づけ
1967年に刊行された《サーカス》は、シャガールが長年の構想をもとに制作した38点のリトグラフで構成される代表的版画集です。シャガールは若い頃からサーカス小屋に足を運び、芸人たちの生き様や舞台の光景を丹念に観察し、そこに「人間の歓びと悲しみ、愛と孤独の縮図」を見出しました。《サーカス Pl.4》はシリーズの中でも特に華やかな場面を描いた作品であり、シャガールらしい詩情と躍動感に満ちています。
マルク・シャガール Marc CHAGALL (1887-1985)
帝政ロシア(現ベラルーシ)のヴィテブスクに生まれる。1907年ペテルブルク(現サンクト・ペテルブルク)の王立美術学校で学び、そこでの経験が彼の芸術に深い影響を与えた。1911年、シャガールは「蜂の巣」と呼ばれるアトリエに移り、そこでロベール・ドロネー、フェルナン・レジェ、モディリアーニなどの画家たちと交流した。この時期に彼の独自の絵画スタイルが花開き、色鮮やかで幻想的な要素が取り入れられた。1963年、パリ・オペラ座の天井画を制作。1977年にはレジオン・ド・ヌール最高勲章を授与された。1985年ヴァンスで死去。シャガールの作品は、空中を浮遊する恋人たちや故郷の素朴な風景など、独自の幻想的な要素が取り入れられ、国際的に高い評価を受けた。彼の油彩画、版画、挿絵などは、美術ファンを魅了し続け、その芸術は時代を超えて多くの人々に感動を与え続けている。