DETAIL
ベルナール・ビュッフェ
《サンマルタン門》
リトグラフ
1962年
65.5×50cm
直筆サイン
限定150部
額・黄袋・箱付き
本作品《サンマルタン門》は、ベルナール・ビュッフェが1962年に制作したリトグラフ作品で、パリ10区にある歴史的建造物「サンマルタン門(Porte Saint-Martin)」を題材に描いた一点です。17世紀の古い凱旋門を描きながらも、ビュッフェ独自の硬質で冷徹な視線が反映され、都市の喧騒ではなく「構造と静寂」を際立たせた作品となっています。
緊張感を宿した都市の肖像
サンマルタン門はルイ14世時代に建てられた壮麗な門ですが、ビュッフェの手にかかると、記念碑的な荘厳さよりも、むしろ無機質で冷ややかな都市構造物として描かれています。門の奥へと続く遠近法の強調によって、まっすぐ伸びる通りが観る者を都市の奥深くへ誘い込み、どこか寂寥感すら漂わせます。
ビュッフェ特有の線と量感
本作では、ビュッフェの特徴である鋭い黒線が建築物全体を覆い尽くし、門や周囲の建物を建築図面のように精密かつ大胆に描き出しています。縦横に走る線はただ形をなぞるだけでなく、空間に緊張感を生み出し、街全体を覆う静謐な空気を強調しています。
色彩は抑えられ、モノトーンに近い階調によって、時代を超えた建築物の存在感と重厚さをより際立たせています。
都市の記憶を描くビュッフェ
ビュッフェは風景画や人物画に加えて、都市建築をテーマにした作品を数多く残しました。特にパリを描いた作品群では、象徴的な建築物を題材にしながら、観光的な華やかさではなく、都市そのものが持つ厳格さ、孤独、そして構造美を浮かび上がらせています。
《サンマルタン門》は、ビュッフェが都市を“感情ではなく線と構造”で捉える姿勢を最もよく示す一枚といえるでしょう。
ベルナール・ビュッフェ Bernard BUFFET (1928-1999)
パリに生まれる。エコール・デ・ボザール(国立芸術大学)に学び、ナルボンヌに師事。1947年頃からアンデパンダン展、サロン・ドートンヌ、サロン・ド・メなどに出品して注目を集める。1948年若干20歳にしてクリティック賞を受賞し、新しい具象画の旗手として名実ともにスターとなる。作風は力強い描線と鋭いフォルム、遠近法を強調したコンポジションに乾いた詩情、沈黙と虚無感が漂う。白と黒の冷たい色調から現代の孤独を描く「悲惨派」の旗手とされた。1999年10月5日死去。色調やテーマは様々に変化したが、常に独特の画風を展開し続けた作品はパリ国立美術館をはじめ、世界各地の美術館に収蔵されている。親日派としても知られ、各地の神社仏閣を回って親交を深め、相撲観戦も楽しむなど、日本文化を積極的に取り入れた。