ベルナール・ビュッフェ
《メロンのある静物》

リトグラフ
50×65cm
直筆サイン
限定150部

額・黄袋・箱付き

本作品《メロンのある静物》は、ビュッフェが得意とした静物画の中でも特に構築的な印象を与える一点です。シンプルなモチーフである果物と食卓を題材としながらも、ビュッフェ独特の鋭い線描と緊張感に満ちた構図が際立ち、まるで建築物のような力強さを感じさせます。

緊張感を生むモチーフと構図

白い皿に置かれた細長い果皮、テーブルの端に置かれた半分に切られたメロン、そして小さく切り分けられた一切れ——それらが極めて静かに並べられています。しかし、その静寂は決して安らぎではなく、むしろ張り詰めた空気を孕んでいます。ビュッフェは、果物の瑞々しさや柔らかさを強調するのではなく、硬質な線と構成によって、モチーフの存在感を際立たせています。

線描と色彩の対比

ビュッフェの代名詞である鋭く硬質な黒い線が、画面全体を覆っています。テーブルのエッジ、果物の断面、背景の陰影までもが力強い線で描かれ、対象がまるで空間を切り裂くかのような緊張感をもたらしています。一方、色彩は抑制され、深いオリーブグリーン、鈍いオレンジ、わずかな黄色のハイライトが、果物と食器の形態を簡潔に浮かび上がらせています。この色と線の対比こそ、ビュッフェの静物画の大きな特徴です。

花ではなく果物を描くという選択

ビュッフェの静物画といえば、バラや水仙など花を題材とした作品群がよく知られていますが、この《メロンのある静物》は果物をモチーフとした比較的珍しい作品です。花々の華やかさとは対照的に、ここで描かれる果物は日常的で素朴な存在ですが、ビュッフェはそれを強靭な線と構築的な構図で捉えることで、普遍的で象徴的な静物へと昇華させています。

ベルナール・ビュッフェ Bernard BUFFET (1928-1999)

パリに生まれる。エコール･デ･ボザール(国立芸術大学)に学び、ナルボンヌに師事。1947年頃からアンデパンダン展、サロン･ドートンヌ、サロン･ド･メなどに出品して注目を集める。1948年若干20歳にしてクリティック賞を受賞し、新しい具象画の旗手として名実ともにスターとなる。作風は力強い描線と鋭いフォルム、遠近法を強調したコンポジションに乾いた詩情、沈黙と虚無感が漂う。白と黒の冷たい色調から現代の孤独を描く｢悲惨派｣の旗手とされた。1999年10月5日死去。色調やテーマは様々に変化したが、常に独特の画風を展開し続けた作品はパリ国立美術館をはじめ、世界各地の美術館に収蔵されている。親日派としても知られ、各地の神社仏閣を回って親交を深め、相撲観戦も楽しむなど、日本文化を積極的に取り入れた。