パブロ・ピカソ
《ジャクリーヌ》
リトグラフ
1958年
48×32cm
ムルロー工房
限定100部
直筆サイン
本作品《ジャクリーヌ》は、ピカソ晩年の創作を象徴する最重要テーマである「ジャクリーヌ・ロック」を描いたカラーリトグラフです。
刷りはピカソの版画制作を長年支えたムルロ工房(Mourlot, Paris)。
黒い紙に鮮烈な色彩を重ねるという独創的な技法が用いられており、ムルロ工房でも非常に高度な刷りを要する作品として知られています。
ピカソ晩年を支えたミューズ、ジャクリーヌ
モデルとなっているジャクリーヌ・ロックは、ピカソが最も愛し、最晩年にもっとも多く描いた女性です。彼女の存在はピカソの1960年代以降の創作の中心を担い、絵画・彫刻・版画の多くに登場します。本作に見られる「象徴化された女性像」は、写実を超え、ミューズの精神性や、女性そのものの力強さを記号的に捉えようとした晩年ピカソ独特のスタイルを示します。
黒地の紙に浮かぶ強烈な色彩 — 晩年ピカソの自由奔放な造形
本作でまず目を引くのは、深い黒の背景に鮮やかな色彩が“光る”ように配置された構成です。
赤・黄・青・紫などの純色が黒の上で強烈に響き合い、まるでネオンのような輝きを放っています。この効果は、ムルロ工房の精巧な多版多色刷りにより実現したものです。
線は奔放でありながら緻密、形態は象徴性を帯びており、晩年ピカソ特有の「自由さ」と「研ぎ澄まされた造形感覚」が共存しています。人物の輪郭線は単純化され、王冠のような装飾、幾何学的な模様、色彩の強いコントラストによって、ジャクリーヌの存在が神話的なモチーフとして昇華されています。
版上サインと白色クレヨンによる直筆サイン — コレクション価値を高める仕様
下部には刷られた“PICASSO”サインに加えて、白いクレヨンによる直筆サインと限定番号が記されています。これは通常の100部とは異なる、別刷りの希少な限定版で、コレクター市場でも特に評価の高い仕様です。
晩年の精神の結晶ともいえる1点
ピカソにとってジャクリーヌは単なるモデルではなく、「芸術を生涯続けるための支柱」でした。
本作に漂うリズム感、色彩の爆発、装飾的でありながら力強い線は、晩年の創造力の頂点ともいえるものです。同時代の版画作品の中でも特に完成度が高く、黒地を用いたリトグラフは市場にも数が少なく、美術館級のクオリティを備えています。
パブロ・ピカソ Pablo Picasso (1881-1973)
スペインのマラガに生まれる。絵画だけでなく彫刻や版画、陶芸、舞台芸術、詩人としてなど幅広く活動。「キュビスム」という新しい美術表現を創造し、20世紀最大の画家と評される。代表作は《アヴィニョンの娘たち》《ゲルニカ》《泣く女》など。その生涯で制作した作品は13,500点の油絵と素描、10万点の版画、34,000点の挿絵、300点の彫刻や陶器など、その数は約15万点。世界で最も多作な美術家であるとギネスブックに認定されている。