156シリーズ
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1,650,000円(税150,000円)
ピカソ晩年の代表的版画《156シリーズ》限定50部作品。犬男と花を持つ女性の官能的な対比が複雑な線描で表現。三技法融合の多彩な質感が魅力。
パブロ・ピカソ《156シリーズ》
1968年-1972年制作
エッチング・アクアチント156点入り挿画本
リシャール・ラカン社刊
概要
《156シリーズ(Suite 156)》は、パブロ・ピカソが1968年から1972年にかけて制作した全156点からなる大規模なオリジナル版画集です。ピカソ晩年の集大成的なシリーズで、エッチングとアクアチントを中心に多様な技法を駆使し、彼の創造力が衰えることなく鮮烈に表現されています。1973年のピカソの死の直前に完成し、パリのリシャール・ラカン社(Galerie Louise Leiris)によって刊行されました。
制作背景
1960年代後半から1970年代初頭のピカソは、90歳に近づきながらもなお驚異的な制作意欲を保っていました。
《156シリーズ》は、彼の画業の晩年における思索や情熱を映し出すもので、以下のようなテーマが多く扱われています。
• アトリエの画家とモデル
• 闘牛士と闘牛
• 愛とエロティシズム
• スペイン文化と神話
• 画家としての自己省察
晩年特有の内省性と、若き日のエネルギーを思わせる即興的な表現が交錯するシリーズで、ピカソの精神世界を垣間見ることができます。
技法と表現
《156シリーズ》は主にエッチングとアクアチントによって制作され、モノクロームによる力強い線描が特徴です。さらにドライポイントやバーニッシャーなど多彩な技法を組み合わせ、深みのある陰影や質感を生み出しています。
• エッチング:鋭く自由な線描による動きのある表現
• アクアチント:柔らかな階調を活かした光と影の対比
• ドライポイント:針で刻むことで生まれる線の強弱とインクのにじみ
この多様な技法を自在に操ることで、ピカソは複雑な心理表現からダイナミックな構図まで幅広く展開しています。
芸術的特徴
1. 晩年の自由で奔放な表現
制約から解き放たれたピカソの線は、若き日のフォルム分析よりも感覚的で流動的です。
2. 官能性と精神性の融合
肉体表現や愛をテーマとした作品が多く、同時に「芸術とは何か」という自己探求も感じさせます。
3. シリーズ全体で物語を紡ぐ構成
単体でも鑑賞可能ですが、全156点を通じて見ると、画家としての生涯と創造の軌跡を一望できます。
限定性と資料的価値
《156シリーズ》は限定50部で刊行され、その希少性から美術市場でも非常に高い評価を得ています。また、ピカソ晩年の創造活動を象徴する資料として、近代美術史上においても重要な位置を占めています。
まとめ
パブロ・ピカソの《156シリーズ》は、90歳を目前にした晩年に制作された全156点の大規模な版画集であり、エッチング・アクアチントの多様な技法を駆使して、愛、創造、死、生をテーマにしたピカソ芸術の集大成です。単なる技法的実験にとどまらず、画家の人生観や精神世界を反映したシリーズとして、美術史上も高い評価を受けています。