受難
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660,000円(税60,000円)
ジョルジュ・ルオー《キリストと貧者たち》アクアチント1935年《受難》より限定245部。直筆サイン入り、制作された技法や作風、宗教的メッセージを通じて、20世紀の宗教美術における金字塔とされるコレクション作品。
ジョルジュ・ルオー《受難(Passion)》
発行:1939年|アンブロワーズ・ヴォラール出版
本文:アンドレ・シュアレス
オリジナル色刷銅版画17点+木口木版画82点
限定245部(市販外25部)
刷師:ロジェ・ラクリエール、アンリ・ジョルド
木版彫師:ジョルジュ・オベール
用紙:モンバルのレイド紙
技法:シュガー・アクアチント、アクアチント、木口木版
1939年に刊行されたジョルジュ・ルオーの版画集《受難(Passion)》は、フランスの詩人・作家 アンドレ・シュアレス(André Suarès, 1868-1948) のテキストに挿画として制作されたものです。ルオーが長年取り組んだキリストの受難をテーマにした大規模な挿画本で、色刷銅版画17点と、ルオーによる下絵をもとにした木口木版画82点から構成される全99点の版画を収録しています。アンブロワーズ・ヴォラールの監修のもと、1930年代後半から複数の版元・刷師と協力し、最上質の素材と技法を用いて完成させた豪華本であり、ルオーの挿画本制作の頂点のひとつといえる作品です。
制作背景
《受難》は、ルオーが生涯を通じて取り組んだ宗教的主題の集大成のひとつです。
1930年代は、第一次世界大戦後の社会不安や人間の苦悩を背景に、ルオーが聖書的モチーフをより深く掘り下げた時期でした。本書では、アンドレ・シュアレスの詩的で哲学的な文章と、ルオーの象徴的なビジュアルが融合し、人間存在の罪と救済、苦しみと希望という普遍的テーマを強く印象づけています。また、この版画集の刊行を支えたのは、印刷出版の巨匠 アンブロワーズ・ヴォラール。ルオーは以前からヴォラールのもとで《ミセレーレ(Miserere)》や《流れる星のサーカス(Cirque de l’Étoile filante)》などの大規模版画集に取り組んでおり、《受難》はそれらと並ぶ代表的な成果です。
技法と制作
色刷銅版画(17点)
• 技法:シュガー・アクアチントおよびアクアチント
• 刷師:ロジェ・ラクリエール(Roger Lacourière)
• 特徴:ルオー独自の重厚で深い色彩を実現するため、複雑な版を重ね刷りする高度な技術が駆使されています。
木口木版画(82点)
• ルオーの下絵をもとに、木版彫師 ジョルジュ・オベール が細密に彫刻
• 刷師アンリ・ジョルドによる高精度な印刷
• 細やかな線描と繊細な陰影が特徴で、銅版画とは異なる柔らかな表情を見せています。
用紙と装丁
• 用紙には最高級のモンバルのレイド紙を使用
• 活字にはエルゼビール・プランタン体を採用し、テキストと版画の美しい調和を実現
• 全体として、ヴォラールらしい高級感と統一感を備えた芸術作品に仕上げられています。
作品の特徴と意義
《受難》に収録された17点の色刷銅版画は、ルオーが得意とする厚みのある黒線と深い色彩によって、キリストの苦悩と人間存在の悲劇を象徴的に描き出しています。一方、木口木版82点は、素描に近い繊細な表現で物語性を補完し、テキストと密接に響き合う構成となっています。この版画集では、絵画・版画・テキストが一体となり、宗教的荘厳さと詩情を兼ね備えた世界観を生み出しており、ルオー芸術の精神性を象徴する重要な成果といえます。
コレクション的価値
《受難》は、ジョルジュ・ルオーの挿画本の中でも《ミセレーレ》や《流れる星のサーカス》と並ぶ重要な位置づけを持つ大作です。
• 限定245部(市販外25部)という発行数の少なさ
• モンバルのレイド紙や高度な印刷技術を駆使した豪華仕様
• ヴォラール主導による制作という歴史的価値
これらの要素から、国際的な市場でも高い評価を受けています。
特に、色刷銅版画と木口木版を併用した版画集はルオーの中でも珍しく、技法的価値も極めて高い作品です。コレクターや美術館にとって必携の一冊といえるでしょう。