直角の詩

   
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ル・コルビュジエ 《直角の詩 (Le Poème de l’Angle Droit)》

技法 : リトグラフ19点 制作年 : 1955年 サイズ : 42×32cm 限定部数 : 250部(各作品に直筆サイン・エディションナンバー入り) 出版社 : テリアード(パリ) 詩・テキスト著者 : ル・コルビュジエ (詩・構成・図版全て本人による)

作品概要|《直角の詩》という到達点

《直角の詩(Le Poème de l’Angle Droit)》は、ル・コルビュジエが晩年に到達した思想を、詩・図像・色彩・版画という複数の表現を用いて総合的に示した、極めて重要な詩画集です。 1955年にパリで刊行され、建築家としての理論書でも、画家としての作品集でもない、ル・コルビュジエという思想そのものを可視化した書物と位置づけられます。 本作は、彼が長年追求してきた「秩序」「比例」「人間と世界の関係」を象徴する概念である「直角」を中心主題とし、芸術と哲学、精神と物質を結びつける試みとして構成されています。

構成と形式|7つの層と19章からなる体系

画像にも記されている通り、《直角の詩》は全体がA〜Gの7つの層(環)に分かれ、それぞれが縦に積み重なる構造を持っています。 各層には1〜5章が配置され、全体で19章から成る明確な体系が与えられています。 それぞれの層は以下のような主題を担います。 • A:環境 • B:精神 • C:肉体 • D:融合 • E:性格 • F:贈り物 • G:道具(開いた手) これらは単なる章分けではなく、人間が世界を認識し、行為し、創造へと至る過程を象徴的に示したものです。 図像と詩は各ページで密接に結びつき、読者は「読む」というよりも「辿る」「体験する」形で作品と向き合うことになります。

図像表現|リトグラフによる象徴の言語

本作に収録される図像はすべてカラーリトグラフによるもので、抽象的な形態、記号化された人体、幾何学的構成、原色を基調とした色面などが特徴です。 これらの図像は、具体的な対象を描写するものではなく、 直角=秩序と自由が交差する点 手=人間の行為と創造 身体=精神と物質の媒介 といった、ル・コルビュジエ独自の象徴体系を視覚化したものです。 特に「直角」は、自然界には存在しない人工的な形でありながら、人間が世界を構築するために不可欠な原理として捉えられており、本作全体を貫く中心概念となっています。

詩と思想|建築を超えた人間論

《直角の詩》に収められたテキストは、説明文でも理論書でもなく、あくまで詩的断章として書かれています。 そこでは、建築、絵画、彫刻といった分野を超え、人間がどのように世界と関係し、秩序を与え、意味を見出すかが静かに、しかし強い言葉で語られます。 これは、合理主義者として知られるル・コルビュジエの、極めて内省的で精神的な側面が最も明確に表れた作品でもあります。 彼にとって建築とは単なる機能の集積ではなく、人間存在そのものを支える詩的行為であったことが、本作からはっきりと読み取れます。

本作の意義|ル・コルビュジエ芸術の総決算

《直角の詩》は、ル・コルビュジエの長い創作活動の中でも、思想・造形・言語が完全に統合された唯一無二の作品です。 建築史、美術史、詩の領域すべてにまたがる存在であり、単独の版画作品とは異なる格を持っています。 そのため本作は、 • ル・コルビュジエの芸術を総体として理解するための決定的資料 • 20世紀モダニズム思想の象徴的成果 • 詩画集としての完成度の高さ という点において、現在も国際的に高く評価されています。

収集・評価の視点|版画集としての価値

限定部数で制作された本作は、単なる挿画本ではなく、一葉一葉が独立したリトグラフ作品としての価値を備えています。 そのため、美術館収蔵例も多く、建築家・思想家・現代美術のコレクター双方から支持されています。 《直角の詩》は、ル・コルビュジエという存在を「建築家」ではなく、20世紀を代表する総合芸術家・思想家として捉えるための核心的作品であり、今後もその評価が揺らぐことはありません。

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