DETAIL
ジョルジュ・ブラック
《静物》
木版画
1962年
36×22.5cm
ルーヴル美術館カルコグラフィ
額・黄袋・箱付き
本作品《静物》は、ジョルジュ・ブラックの原画を木版画に起こした作品で、原版がルーヴル美術館に永久保存されている作品です。ブラック晩年の作風を反映しており、キュビスムの探究と装飾的な色彩表現の調和が特徴となっています。
キュビスムからの発展
ピカソとともにキュビスムを築いたブラックですが、本作では初期の厳密な造形分析から離れ、より柔らかく自由な表現を取り入れています。
卓上の果物や器、布、楽器のようなモチーフが分解・再構成され、複数の視点が交錯するブラックらしい造形感覚が見られます。抽象的な印象を与えながらも、静物としてのモチーフはしっかりと認識できる構成です。
色彩と版画ならではの質感
落ち着いた藍色や緑を基調に、果物や布の白、オレンジがアクセントとして配されています。深みのある色調の中に小さな明暗差が加わり、画面にリズムと動きを生み出しています。また、木版画ならではの独特なマチエールが、油彩作品とは異なる柔らかさを与え、版画ならではの味わいを感じさせます。
装飾性と静けさ
1960年代のブラックは、キュビスム的構造を保ちながらも、より装飾的で親しみやすい表現を探求していました。本作でも、モチーフを分解した幾何学的な構成の中に、柔らかな色彩と穏やかな空気感が調和しています。知的でありながらも過剰な主張はなく、静かに画面を楽しむことのできる作品です。
ジョルジュ・ブラック Georges BRAQUE (1882-1963)
フランスのアルジャントゥイユに生まれる。初期はフォーヴィスムの影響を受け、鮮やかな色彩と自由な筆致を用いた作品を制作していたが、1907年頃からパブロ・ピカソと出会い、共にキュビスムを創始した。キュビスムでは、対象を複数の視点から同時に捉え、形を幾何学的に分解・再構築する革新的な表現を追求した。特に、紙片や木目などを画面に取り込むコラージュや、色彩を抑えた落ち着いた構成で知られる。その後、第一次世界大戦を経て、より装飾的で柔らかなスタイルへと移行し、静物画や楽器、鳥などをモチーフにした作品を多く残した。ブラックの探求は、現代絵画の新たな可能性を切り開き、20世紀美術に大きな影響を与えた。