DETAIL
ベルナール・ビュッフェ
《ギロチン》
リトグラフ
1977年
68×48cm
直筆サイン
限定150部
《フランス革命》より
額・黄袋・箱付き
本作品《ギロチン》は、ベルナール・ビュッフェが1977年に発表したオリジナル・リトグラフ集《フランス革命(La Révolution Française)》のうちの一点です。革命期を象徴する最も劇的なモチーフである「断頭台(ギロチン)」を正面から描き出し、歴史の重みと人間の運命を突きつけるような強烈な緊張感を放っています。
ギロチンが象徴するもの
ギロチンはフランス革命期の象徴的な存在であり、王政を倒し自由を求めた人々の闘争、そしてその過程で繰り返された血と犠牲を示しています。ビュッフェはその象徴性を最大限に引き出すため、断頭台を画面中央に堂々と配置し、逃げ場のない視線で対峙させます。背景にはコンコルド広場を思わせるクラシカルな建物群が並び、革命の劇的な場面が繰り広げられたパリの空気感を強調しています。
線と色彩の力学
ビュッフェの代名詞ともいえる鋭い黒い線描が、本作でも圧倒的な存在感を示しています。断頭台の直線は冷徹で、まるで歴史の不可避な運命を象徴しているかのようです。さらに、赤で染められた画面は血と激情を暗示し、観衆を示す黒い帽子の群れが画面全体を覆うことで、当時の群衆心理と革命の熱狂を視覚的に描き出しています。一方で、澄み切った空の青は対照的に冷たく、劇的な場面をより残酷に際立たせています。
《フランス革命》シリーズにおける位置
1977年に制作された《フランス革命》は、全10点で構成されるオリジナル・リトグラフ集で、バスティーユ襲撃、ヴァルミーの戦い、ロベスピエールなど、革命を象徴する場面や人物を描いた意欲的な作品群です。本作《ギロチン》はシリーズの中でも最も緊張感の高い一点であり、「自由の獲得」という理想の裏に潜む「恐怖政治」や「人間の宿命的な対立」を象徴する核心的な作品といえます。
ベルナール・ビュッフェ Bernard BUFFET (1928-1999)
パリに生まれる。エコール・デ・ボザール(国立芸術大学)に学び、ナルボンヌに師事。1947年頃からアンデパンダン展、サロン・ドートンヌ、サロン・ド・メなどに出品して注目を集める。1948年若干20歳にしてクリティック賞を受賞し、新しい具象画の旗手として名実ともにスターとなる。作風は力強い描線と鋭いフォルム、遠近法を強調したコンポジションに乾いた詩情、沈黙と虚無感が漂う。白と黒の冷たい色調から現代の孤独を描く「悲惨派」の旗手とされた。1999年10月5日死去。色調やテーマは様々に変化したが、常に独特の画風を展開し続けた作品はパリ国立美術館をはじめ、世界各地の美術館に収蔵されている。親日派としても知られ、各地の神社仏閣を回って親交を深め、相撲観戦も楽しむなど、日本文化を積極的に取り入れた。