ジャン=フランソワ・ミレー 《落穂拾い》 エッチング 1855−56年

2,200,000円(税200,000円)

DETAIL

ジャン=フランソワ・ミレー
《落穂拾い》


エッチング
1855−56年
19.2×25cm


額・黄袋・箱付き

本作品《落穂拾い》は、ジャン=フランソワ・ミレーが1855年から1856年にかけて制作したオリジナルエッチング作品で、彼の代表的なテーマである「農民と労働」を象徴的に描いた一枚です。

農民への敬意と人間の尊厳


本作には、収穫の終わった畑で落ち穂を拾う三人の農婦が描かれています。彼女たちは収穫後に残った穀物を拾い集めることで生計を立てる農民で、当時の社会では貧しさの象徴でもありました。しかしミレーは、彼女たちを哀れむのではなく、労働を通じて大地と結ばれた人間の強さと尊厳を描き出しています。俯いた姿勢や働く手の動きには、労働の重みと静かな誇りが感じられます。

線描が生む静謐な空気


このエッチングは、油彩による有名な同名作品《落穂拾い》(1857年)と同じ主題を扱いながら、版画ならではの繊細な線描表現が魅力です。細かな陰影と緻密なハッチングによって、夏の光を受けた畑の広がりや空気の透明感が巧みに表現されています。画面奥には荷車や干し草の山も描かれ、農村の豊かさと人々の営みを示すと同時に、前景の農婦たちと響き合う構図を作り出しています。

ミレー芸術の核心を示す作品


本作は、ミレーが生涯を通して追求した「農民の生と労働」というテーマを凝縮した作品です。宗教的絵画にも通じる厳かな構図と、農民への深い共感が融合し、日常の労働を人間存在の根源的な営みとして描き出しています。このエッチングは、農村の現実を写実的に記録するだけでなく、労働を普遍的な価値へと昇華させた、ミレー芸術を象徴する重要な一点です。

ミレーと版画作品


ミレーといえば農民を主題にした《種まく人》《落穂拾い》《晩鐘》などの名画が有名ですが同テーマの作品を版画でも残しています。1847年頃、ミレーは版画家として有名であったシャルル=エミール・ジャックと出会いました。「自分の心にある絵をすべて描き尽くすまで、私は長生きできまい。だから自分が言いたいことを世の中に伝えるためには、油絵とは別のもっと簡便な表現方法をみつけねばならない。」当時油絵以外の絵画技法を探していたミレーは、この出会いを機に版画に興味を持ち制作を始めました。ミレーは生涯においてエッチングをはじめ、リトグラフ、ガラス版画、木版画などの版画作品を残しています。大量制作が目的ではなく、新しいアイディアの記録や親しい友人に配るために摺られたため、版画作品の枚数はごく少数だといわれています。

「本当に感動したものを描くのに、わずかな表現で満足できるはずがない。」と語っているように、ひとつの主題を油彩、パステル、デッサン、版画など様々なジャンルで何度も繰り返し制作しました。制作の順序は版画が先の場合と油絵が先の場合とまちまちで、ミレーは油彩と同様に版画を重要な表現方法のひとつとみなしていました。的確な線のみで明暗を簡潔な構図に表し、卓越した素描力を示しつつ、油彩とは一線を画す独自の芸術的魅力を放っています。

ジャン=フランソワ・ミレー Jean-François MILLET (1814-1875)


フランスのノルマンディに生まれる。農民としての生活体験を基盤に、農村の人々の日常と労働を荘厳に描いた。代表作《落穂拾い》《晩鐘》《種をまく人》では、大地と共に生きる農民の姿を力強い構図と重厚な筆致で表現し、人間の尊厳と生命力を讃えている。その作品は、後の印象派や写実主義にも大きな影響を与えた。自然と人間の営みを敬虔なまなざしで捉えたミレーは、農民画家としてではなく、人間存在の普遍的価値を描いた芸術家である。バルビゾン派のプレイヤード(七星)の一人に数えられ、同派を代表する存在である。

ショッピングガイド

SHIPPING 配送・送料について

クロネコヤマト

RETURN 返品について

不良品
商品到着後速やかにご連絡ください。商品に欠陥がある場合を除き、返品には応じかねますのでご了承ください。
返品期限
商品到着後7日以内とさせていただきます。
返品送料
お客様都合による返品につきましてはお客様のご負担とさせていただきます。不良品に該当する場合は当方で負担いたします。

PAYMENT お支払いについて

テスト用決済